南信州リニア未来ビジョン(議論のための)

南部ブロックのビジョン

南部ブロック図

南部ブロック図

南部ブロックのビジョン

(1) 特長と機能

南部ブロックは、阿南町、下條村、売木村、天龍村、泰阜村の5町村で構成され、人口規模は1万人余、中央を天竜川が流れ、川沿いにJR飯田線が走っています。長野県内でも特に過疎化と高齢化の進んだ地域でありながら、4つもの国の重要無形民俗文化財(天龍村の霜月神楽、新野の盆踊、新野の雪祭、和合の念仏踊)が今もなお継承されている、類いまれな地域です。

三遠南信自動車道の全線開通によって、南部ブロックは長野県の南の玄関口としての優位性が高まります。加えて、リニア駅までのアクセス道路が整備されれば、相乗効果により「ヒト・モノ・コト」の交流が盛んになり、今よりも地域の発展が期待されます。

アクセスが良くなる一方で、人口流出によって地域が衰退しないためにも、リニア・三遠南信道時代への“備え”として、5町村が持つそれぞれの長所を伸ばし、短所を補完し合う取組みが重要になると考えます。

(2) まちづくりの基本的な考え方(エリアイメージ)

豊かな自然や地域資源を活用し、体験や人とのふれあいを通じて、健幸(けんこう)と癒しを提供する「クアオルト※(住む人も訪れる人も住みたくなる/住み続けたくなる、居心地の良いエリア)」を目指します。 南部ブロックは豊かな自然環境と温泉資源に恵まれ、住む人の人柄は穏やかで言葉もやさしく、癒しを求めてやってくる人にとって療養地(クアオルト)に相応しい地域であると考えます。地域住民に対してもこの地域資源の利用を促し、健幸になって住み続けてもらえる地域を目指します。

※ドイツ語のクア(Kur)「治療・療養、保養のための滞在」とオルト(Ort)「場所・地域」を合わせた言葉で「療養地」という意味

◆つながり・移住

  • 新たな暮らし、働き方への提案や備えとして、眺望の良い場所やアクセスの良い場所にコワーキングスペースやテレワーク等を整備します。
  • 南部は地理的条件や立地環境等の面で企業誘致が難しいとされ、これまで「働く/仕事」は、中心市である飯田市等が補完して生活圏を形成してきました。しかし、働き方改革やコロナ禍により、国や企業はテレワーク等の新しい仕事の形の普及を進めており、地方で働き、暮らすという選択肢が生まれています。これをチャンスと捉え、テレワーク等に関する補助や移住につながる農ある暮らし(長野県は優位性が高い)の提案といったメニューや支援を整えます。
  • 様々な人々(地域住民、移住者、来訪者)の交流ができるゲストハウスの活用や新たな施設の創出を進めます。
  • 交流イベントの開催により、関係人口の創出や拡大を図ります。
  • 移住・定住につながる滞在型市民農園(クラインガルデン)の拡充や、お試し移住体験ができる施設等の整備を進めます。
  • 山村留学に取組んできた町村が多い地域であり、将来、山村留学を経験した子どもたちが第2の故郷として地域とつながったり、移住したりするケースもあり、関係人口の裾野を広げる取組みとして継続して実施します。

◆暮らし・仕事

  • 農業の担い手不足が課題となっており、その解消のため農業経営の継承、専業農家や兼業農家の育成に向けた準備は重要であると考えます。また、耕作放棄地の解消や景観保全にもつなげます。
  • 中心市である飯田市へのアクセスについて、基幹路線に位置づけている南部公共バスを生活交通の重要な手段として充実を図ります。

◆観光・レジャー

  • 各町村に点在する温泉施設を拠点として、その周辺にある保養施設や観光施設とも組み合わせることで回遊性を高め、滞在型観光へとつなげます。
  • キャンプ場、ゴルフ場、観光農園、眺望の良いビュースポット等の整備を進めるとともに、この地域のファンづくりと回遊性や滞在時間を高める取組みを検討します(例えば、デジタルスタンプラリーや探訪コース等の旅行企画の設定や情報発信)。
  • 二次交通の整備(観光タクシー、レンタカー)や飯田線を活用したスロートラベルを企画します。

◆学び

  • 県立阿南高等学校に民俗芸能に特化した学科を創設し、全国から高校生を募集することで、地域と連携した民俗芸能の保存や継承(後継者育成)を図ることを検討します。

◆健康・福祉

  • 県立阿南病院と各町村にある診療所等とが連携し、子どもから高齢者まで、地域に暮らす皆さんのニーズに合った医療を提供し、将来にわたり地域で支える福祉環境を整備します。
  • 健康づくりのためのスポーツ施設や、自然に親しむハイキングやサイクリング等の環境整備、リフレッシュするための保養施設等を充実させます。
  • 全国的にも高齢化が先行していたこの地域は、いわば高齢者福祉の先進地であり、介護保険制度が始まる以前から様々な高齢者福祉を全国に先駆けて実施してきました。そのため、年を重ねても、介護が必要になっても、状況に応じて支えてくれる体制が整っており、選択肢も多く存在します。介護予防、在宅支援、施設介護、それぞれの場面で安心して暮らすことができる地域づくりを今後も進め、高齢者福祉のトップランナーであり続けます。
  • 自然に囲まれた温泉施設が多く、宿泊施設や健康増進施設等も近接するという立地条件を活かし、プチ湯治場(医療ツーリズム、ウェルネスツーリズム)を整備します。

◆地域の財産

  • 日本有数の河岸段丘である伊那谷の南部に位置するこの地域には、豊かな自然環境や農山村風景、伝統芸能や伝統産業、行事等の固有の地域資源があります。これらは地域の宝であり、貴重な財産として守り伝え、30年後の未来にも引き継いでいかなくてはなりません。

◆道路

  • リニア駅や上伊那地域、三遠南信自動車道へのアクセス向上のための道路ネットワーク整備のほか、リニア駅を中心とした広域交通の整備も重要な課題です。
  • 長野県の南の玄関口として、飯田市とを結ぶ東部軸である県道1号(飯田市~泰阜村~天龍村)の改良整備を進めます。