南信州リニア未来ビジョン(議論のための)

飯田市(中部ブロック)のビジョン

飯田市(中部ブロック)3重心図

飯田市(中部ブロック)3重心図

飯田市(中部ブロック)図

飯田市(中部ブロック)図

飯田市(中部ブロック)のビジョン

(1) 特長と機能

飯田市は、人口約10 万人の南信州地域の中心市です。市域の北部にリニア中央新幹線の中間駅が設置されることから、この影響を直接受けることになります。これまで、「地域の多様性をいかし、豊かな暮らしを実現する持続可能なまち」の実現に向けて、「山」「里」「街」のそれぞれのストックと魅力を活かしたまちづくりを進めてきましたが、リニア中央新幹線の開通を見据えつつ、大学誘致の動きなどを踏まえた新たな視点でのまちづくりや土地利用及び景観のあり方についても検討し、取組を進めていく必要があります。

(2) まちづくりの基本的な考え方(エリアイメージ)

リニア時代を見据えた21 世紀型の新しいまちづくりを展開するため、「都市重心」・「人口重心」・「交流重心」という3重心を意識したまちづくりを基本に据えます。

(3) 「3重心」による機能と構造

◆都市重心[中心市街地エリア]
「都市重心」としての中心市街地には、行政機能、公安機能、まちなかMICE機能(飲食・宿泊・会議等)、文化活動の拠点機能等多くの都市機能が集積しています。さらに今後、居住環境や交通利便性の向上を進め、リニア時代に人・資本・情報を呼び込み多様なライフスタイルを実現できるエリアとしていきます。

◆人口重心[生活利便向上エリア]
「人口重心」は、国勢調査の結果から導き出される地点で、飯田市の「人口重心」は国道153 号線バイパス南側の鼎名古熊地籍に位置しています。これを中心とする3km 圏内は、中心市街地が含まれるほか、市民生活を支える居住や商業機能等を担っていることから、生活利便性を向上させるエリアとします。

◆交流重心[リニア活用グリーンエリア]
リニア駅は、地域内外への移動のための広域交通拠点であり、中央自動車道座光寺スマートICと連動し、多様な人材が行き交い、新たな人の流れと交流を生み出す「交流重心」と位置付けます。このエリアでは、自然の持つ多面的な機能や仕組みを活用し、災害復旧・復興等にも配慮してグリーンインフラの導入の検討や、リニア開通で形成される「ナレッジリンク(知の集積地)」のほぼ中心となる当地域に4年制の大学を誘致し、これを中核に据えた「大学のあるまちづくり」を進めます。

(4) 交流重心(リニア活用グリーンエリア)の機能

◆つながり・移住

  • 「交流重心」は、多様な人材が行き交う拠点となり、最先端のデジタル技術と融合した地域の強みを活かした新しい産業の創出や、リニアを利用した大都市と地方にまたがる新しいライフスタイル(二地域居住、都市圏勤務・通学、ワーケーション等)の創出を目指します。
  • リニアがもたらす様々な人材の往来を想定し、民間の積極的な投資を誘引し、サテライトオフィスやワーケーションなどの受け入れを推進します。
  • 座光寺スマートICを中心に、リニア駅、エス・バード(産業振興と人材育成の拠点)を結ぶエリアは、アクセス環境の利便性と南アルプスの眺望等の自然景観の強みを併せ持ち、さらに北部町村を含む天竜川周辺の産業団地等との連携も可能なことから、海外も対象に含めた研究開発型企業・機関の誘致を推進します。

◆暮らし・仕事

  • リニア駅及び座光寺スマートICを含むエリアは、自動車、鉄道、路線バス等の各種交通モードへのアクセス機能と乗換利便性を高めることにより、地域内外への移動を円滑にするための広域交通拠点として機能することを目指しています。
  • リニアの開通効果を活かすことができる二次交通や、持続可能な地域公共交通の構築という観点も含め、広域交通拠点とその他の拠点(中心拠点・交流拠点・地域拠点)とのシームレスな接続を実現するため、最新の技術動向も踏まえつつ、望ましいモビリティの導入・実装に取り組みます。
  • リニア駅前広場の整備については、リニアの乗降客のみならず、当地域の人も利用できる「人が主体の賑わいのある空間」とすることを基本としています。
  • これを踏まえ、環境に優しい気持ちの良い空間を創出するため、周辺に広がる良好な田園風景や段丘崖の緑、またその背後に横たわる南アルプスや伊那山地等の豊かな自然、こうした信州・伊那谷らしい景観を維持しつつ、道路サイン計画やランドスケープの観点を踏まえて、都市と自然が調和した良好な環境を整備します。
  • 環境・エネルギー分野やモビリティ分野での技術革新、コロナ以降の社会的価値観の変容も含め、地域や社会を取り巻く環境や情勢の変化にも柔軟に対応できるような可変性が必要となります。
  • 世界に貢献する産業振興と新たな価値創造に向け、エス・バードでは、産官学連携によりリーディング産業を創出して未来に羽ばたく人材と技術を育て、当地域の産業の高度化、高付加価値化を実現していきます。
  • リニア駅とエス・バードを結ぶエリアを「サスティナブル オフィスゾーン」とし、リニアがもたらす人の流れを活かすことができるビジネスゾーンの形成を推進します。具体的には、サテライトオフィスを含め、新たな企業の積極的な誘致や研究開発を促進するとともに、人材の誘導を進めることにより、新型コロナ後の環境変化を的確に捉えた新しいビジネスの創出や、地域産業との連携・交流等の機能を担います。
  • 「2050 年いいだゼロカーボンシティ宣言」の実現に向けて、「交流重心」において再生可能エネルギーや脱炭素技術の活用を進め、この取り組みを域内に拡げることにより、「ゼロカーボンシティ」モデルの構築を目指します。
  • 特に、リニア駅前広場では、再生可能エネルギーや脱炭素技術の活用による省エネ・創エネ等を進め、ゼロ・エミッションのモデルとなるシステムの構築を目指します。
  • また、リニアに関連する事業に伴い移転をお願いする皆様に向けて整備している代替地については、脱炭素な暮らしを実現する住宅を集積することにより、環境文化都市のモデルとなる環境共生エリアを具現化します。

◆学び

  • 研究開発や人材育成の機能を持つ4年制大学を誘致し、これを中核に据えて産官学が一体となり新たな価値の創造に取り組むことで、リニアにより形成されるナレッジ・リンク(知の集積地)の一翼を担い、当地域が国内や世界に影響力を持つ存在となることを目指します。

(5) 人口重心(生活利便向上エリア)の機能

◆暮らし・仕事、学び、健康・福祉

  • 当地域の「人口重心」は、広域的な交通を支える中環状道路軸のほぼ中心にあり、3km 圏内には、飯田運動公園等のスポーツ施設や市立病院があります。また、このエリアの中心を東西に走る国道153 号バイパス及びその周辺には、店舗が集積し、医療・介護福祉・子育て支援・金融等の施設もあります。こうしたことから、当地域全体の生活利便性を向上させる中心的な役割を担うエリアとして、今後も維持発展させていきます。

(6) 都市重心(中心市街地エリア)の機能

◆暮らし・仕事、健康・福祉

  • 中心市街地では、国や県・市の行政機能や、医療・福祉・子育て支援・教育文化・金融などの地域の暮らしを支える機能に加え、地域内外の人の移動に必要な公共交通のハブ機能、飲食・宿泊等・文化施設等の商業・観光機能が集積しています。
  • 今後は、これらの機能や、警察・消防等の生活の安全安心を守るための施設の集積を維持しながら、居住環境や交通利便性の向上を進め、併せてまちなかでの文化活動やMICE機能等も充実させることにより、リニア時代に人・資本・情報を呼び込めるような、多様なライフスタイルを実現できる「都市重心」としてのまちづくりを推進します。

(7) その他のエリアの機能

◆観光・レジャー・暮らし・仕事

  • リニア中央新幹線や三遠南信自動車道の開通により、遠山郷や天龍峡には、三河遠州方面のみならず、さらに広いエリアからの観光客が期待されます。また、当地域を経由しての上伊那や木曽・岐阜県方面への人の移動も想定されることから、これらを多様な交流や観光消費の増大につなげていきます。
  • コロナ後の観光の方向性(周遊・長期滞在等)も見据える中、当地域の雄大な自然や伝統芸能、特色のある食事といった固有の地域資源に、体験教育等の独創的なアクティビティを加えて、地域の魅力の向上を図り、人の交流の拡大につなげていきます。
  • 飯田市北部地域(橋北・座光寺・上郷地区)は、歴史的建造物が連なる街並み、古くから今に保存・伝承される人形浄瑠璃をはじめとする人形文化、数多くの史跡や寺院・神社などが点在し、古き時代から近代までの歴史と文化を探訪できるエリアです。また、一本桜、紅葉、果樹の花、田園風景等、四季折々の表情を間近で堪能することができます。こうした地域資源の組み合わせにより、多様化する旅の目的に対応する新たなツーリズムを造成していきます。

  • 飯田市西部地域の風越山、信濃路自然歩道、猿庫の泉、沢城湖、西部山麓線から南アルプスを見渡す眺望など、既存の自然環境を「山歩きとサイクリング」で一体的に活用し、多様化する旅の目的に応えていきます。

  • 天竜川沿いの豊かな景観を楽しめる舟下りやラフティングといった自然体験型コンテンツに加え、天竜川沿岸の地形を生かした広域的なサイクリングルートの開発など、地域資源を活用した周遊型の観光を推進します。

  • 三遠南信自動車道「天龍峡大橋」に設けられた歩廊「そらさんぽ天龍峡」や天龍峡パーキングエリアは、名勝天龍峡の新たな魅力発信の場となっています。今後は圏域の南部ブロックや西部ブロックとも連携を図り、「物販・交流等の場」として活用を図ります。また、天龍峡をめぐる新たな遊歩道は、そらさんぽ天龍峡を加え自然を生かした高低差のあるコースとなっており、健康志向・トレッキング志向の利用者等、より広範囲の集客につなげます。

  • 遠山郷は、ユネスコエコパーク、日本ジオパークの2つのエリアが重なる国内唯一の重複指定地域で、多くの地質遺産と生物多様性に富み、国指定重要無形民俗文化財の遠山の霜月まつりに代表される芸能など魅力にあふれた地域です。道の駅遠山郷、しらびそ高原、下栗の里の3つの拠点を軸に、遠山郷ならではの教育観光や学術観光、南アルプスを中心とした山岳高原観光など人と自然との共存をテーマに、新たな魅力を創出していきます。


◆道路

  • 当地域への新たな人の流れを創出し、多様な交流につなげていくために、社会基盤としての道路整備と二次交通の整備を着実に進め、当地域内の利便性を高めつつ、町村も含めた各拠点間の連携を強化していきます。